うつは食事で治る

たとえばうつ状態が典型的だと思いますが、人間にはどうしても前向きな考えが持てない状態というものがあります。

うつ状態の人は、セロトニンの働きが鈍くなっています。ご存じかもしれませんが、セロトニンというのは脳内の神経伝達物質です。主な神経伝達物質でいえば、これ以外にはノルアドレナリンとドーパミンがあります。

ドーパミンは物事における行動の動機付けをする神経伝達物質です。人が何か行動をしようとするときは、脳内で大量のドーパミンが放出されます。

また、ノルアドレナリンは「怒りホルモン」とも称される神経伝達物質です。脳内でこれが大量に放出されると、体が覚醒・集中して積極性も増し、傷を負っても痛みを感じなくなります。

火事場の馬鹿力とはまさにこのノルアドレナリンの成せる技です。

最後にご紹介するセロトニンは、ドーパミンやノルアドレナリンといった活発なホルモンの分泌をコントロールして心を穏やかにします。

そのためセロトニンの分泌が不足すると、体内でドーパミンやノルアドレナリンが過剰に放出されてしまい、極端に不足すると睡眠不足にも陥ります。

ドーパミンやノルアドレナリンが過剰に放出されれば、 ハイテンションな躁状態が続いてしまいます。しかし、逆にこれらの分泌が不足すると、誰しもがふさぎ込んでまるで意欲が沸かないうつ状態に陥ってしまいます。

このように、人間が常に健やかな前向き感を維持していくためには、ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンがバランス良く、かつ不足しないことが肝要です。

私たちは、うつ状態の理由を「気合いが足うない」などと精神論で片づけてみたり、少し知識がある人になると、脳神経の働きが悪くなったことのように捉えがちです。

もちろん、うつ症状の中には、脳神経の働きが悪くなったためにそうなっている人もいるわけですが、私の実感では、実は単純にセロトニンをつくる材料が不足している人が少なくありません。

その理由はここでいうセロトニンは、食物からしかとれない必須アミノ酸のトリプトファンによって生成されているからです。

このトリプトファンが摂取できないために、結果的に体内でセロトニンが不足して意欲も気力も萎えて、うつ状態に陥っている人がこの現代では少なくありません。

その証拠に、食事指導によって、うつ状態が改善する人もけっこう多いのです。

トリプトファンは必須アミノ酸ですから、たんぱく質をしっかりとれば、本来不足のしようがないものです。また、人は疲れるとどうも積極的になれなくなります。

男性はとくに、「以前よりも疲れやすくなった」ということに年を感じて落ち込むようです。

現代人は疲労感や俗怠感を訴える人が多いですが、たんぱく質が不足していることによる身体の疲れに起因している場合が少なくありません。

できるだけ、こぶし大1個分の大きさほどのたんぱく質を毎食、とるようにするべきなのです。

ところが、私たちが日常的にとるハム、ベーコン、ソーセージなどの加工された肉類はその中に、防腐剤や添加物がたくさん含まれています。そのため栄養の吸収が阻害されていることがあります。

もし、たんぱく質をきちんと体内に吸収させるのであれば、お肉もなるべく加工品ではないそのままの状態であるのが望ましいといわれています。

具体例でいえば、ひき肉やステーキのように原形のままの肉・魚は、体に良質のたんぱく質を取り入れることができます。

栄養を主眼においた料理の本などでは、よく「良質のたんぱく質をとりましょう」という趣旨の記述がありますが、これも加工されていない肉や魚などのたんぱく質のことを指しています。

ところで、トリプトファンは私たちが日常的に飲む牛乳にも多く含まれています。

その意味で、牛乳をとることは良いに違いありませんが、脂質が多い乳製品のとり過ぎには注意したいところ。また、体への吸収という面では、当然ながらビタミンやミネラル、酵素などをバランスよく摂取すことが欠かせません。

その意味では、ご飯や野菜と一緒に、加工されていない肉や魚を食べることがとても重要なのです。